大きな恰好をした人間が呼んでいる

 大変に高い、大きな恰好をした人間が呼んでいる。早く行って見ようと思いましたので、馬の尻を鞭でたたいて宙を飛ばしてかけつけました。「やあ、これあ珍しい御夫婦だ。おれああんた方のような珍らしい御夫婦は初めて見た。どうもえらく高い人だな。別嬪《べっぴん》さんの方はまるで棹《さお》のようだ。それに又、旦那様の肥って御座ること、どうだ。まるで手まりのようだ」 と馬車屋は大きな声で云いながら近寄って来ましたので、夫婦は真赤になってしまいました。「あたしはこんな馬車屋さんの馬車には乗らない。今にどんなことを云ってひやかすかわからないから」 とヒョロ子は云いました。「馬鹿を云え。一所に乗って行かなければ何にもならないじゃないか……。どうだい、馬車屋さん。これから町まで倍のお金を払うから、大急ぎで乗せて行ってくれないか」 と云いました。 馬車屋は大きな手をふって云いました。「滅相な。お金なんぞは一文も要りません。あんた方のような珍らしい夫婦を乗せるのは一生の話の種だ。さあさあ、乗ったり乗ったり」 と云ううちに、馬車のうしろの戸をあけてくれました。 ところが、その入り口が小さいので、豚吉の肥った身体《からだ》がどうしても這入りません。しかたがありませんから、馬車の前の馭者台《ぎょしゃだい》の処にお爺さんと並んで乗って、ヒョロ子だけ中に這入らせようとしますと、天井が低いので、ヒョロ子がしゃがんでも頭が支《つか》えます。そればかりでなく、豚吉が右側に乗ると馬車が右に引っくり返りそうになり、左に乗ると左側の車の心棒が曲りそうになります。「これあ大変なお客様だ。折角|無代価《ただ》で乗ってもらおうと思っているのに、二人共乗れないとは困ったな」「おれも乗りたいけれども、これじゃ仕方がない」

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