馬車屋のお爺さん

「もうよしましょうや。あなたも些《すこ》し辛棒しておあるきなさいよ」 こんなことを云っているうちに、馬車屋のお爺さんは不意に手をポンとたたいて、「うまいことを思い付いた。二人とも馬車の屋根に乗んなさい。私がソロソロあるかせるから」「ウン、それはいい思い付きだ」 と豚吉もよろこびました。けれども背が低いので登ることが出来ません。 それを見たヒョロ子は、イキナリ豚吉をうしろから抱《かか》えて、ヒョイと馬車の屋根に乗せまして、自分も飛び上がりました。 馬車屋のお爺さんはビックリして眼をまん丸にしていました。 馬車が動き出すと、屋根の上がまん丸くなって今にも落ちそうになりますので、夫婦はしっかり抱き合っていなければなりません。 そのうちに一つの村に来ますと、サア大変です。村の入り口に遊んでいた子供たちがすぐに見つけて、「ヤア。定《さだ》っぽの馬車の上に長い長い女と短い短い男と乗っている。おもしろいおもしろい」 と村へ走って帰りましたので、ちょうど朝御飯をたべていた人達は、皆一時に表に飛び出しました。見ると成る程、今までに見たことのない奇妙な夫婦が、馬車の上に乗ってソロリソロリとやって来ますので、皆不思議がってワイワイ云い初めました。「珍らしい夫婦だな」「兄妹《きょうだい》だろうか」「女の方は飴《あめ》の人形を引き延したようだ」「男の方はまるで踏《ふ》み潰《つぶ》したようだ」

— posted by id at 10:31 am  

T: Y: ALL: Online:
Created in 4.2386 sec.

http://2ch-tool.net/